ご存じのように、髪は大きく分けて、●キューティクル(毛小皮)、●コルテックス(毛皮質)、●メデュラ(毛髄質)に分けられます。これらは、のり巻きのような構造をしていると言えます。
のりがキューティクル、ご飯粒(これは長っ細いタイ米をさらに細長くしたような感じ)がコルテックス、かんぴょうがメデュラです。そして、キューティクル1枚、ご飯粒一粒がひとつの細胞からできているのです。
ご飯粒(コルテックス細胞)の中には、さらに小さな米粒とそれをくっつけている接着剤のようなものがあります。
これをマクロフィブリル、マクロフィブリル間物質と呼びます。そしてマクロフィブリルはさらにミクロフィブリルとそれをくっつけている接着物質であるマトリックスからできています。
すなわち毛髪はマトリョーシカのようになっているのです。
接着剤の役割をもつマクロフィブリル間物質やマトリックスを「間充物質」と呼ぶことがあります。
コルテックス細胞同士は密着しており、あいだを埋める接着物質の代わりに、細胞膜同士が融合した細胞膜複合体(CMC:
Cell Membrane Complex)を形成しています。これはCMCの中でも、コルテックス・コルテックスCMCと呼ばれるものですが、CMCは重なったキューティクルとキューティクルの間にも存在し、キューティクル・キューティクルCMCと呼ばれます。またキューティクルとコルテックスの間にもあって、こちらはキューティクル・コルテックスCMCと呼ばれます。
すなわち、毛髪の中には3種類のCMCがあるわけです。
CMCは脂質とマトリックスに似たタンパク質でできています。とくにキューティクル・キューティクルCMCには18-MEA(18-メチルエイコサン酸)と呼ばれる脂質があり、これが髪の表面のツヤに大きく影響しています。
毛髪に水や薬剤が浸透するとき、このCMCを通ってコルテックス内部に浸透し、ミクロフィブリルやマトリックスに作用するわけです。健康な髪だと、水につけたとき、あっという間に内部に浸透し、水から出すとあっという間に水分を吐き出します。これはCMCの作用で、CMCは髪の中の高速道路と言えます。
よく繊維という言葉が使われますが、毛髪そのものを繊維と呼ぶこともありますが、私たちは、コルテックス、マクロフィブリル、ミクロフィブリルもそう呼び、特にマクロフィブリル、ミクロフィブリルを、毛髪とは分けて繊維と呼ぶことが多いのです。ちなみにフィブリルfibrilとは繊維を表す言葉で、ほとんどfiberと同じです。
まとめると、おおざっぱにいえばコルテックスは、繊維とそれをくっつける間充物質でできていると言ってもよいと思います。
パーマやカラーで髪が傷むとき、まず薬剤の浸透経路であるCMCが影響を受け、薬剤の作用がきつすぎるとCMCが壊され穴が開いたような状態になります。それで薬剤が内部に浸透すると、マトリックスなどの間充物質の結合が切れ、細切れの状態になり、毛髪外部に流出してきます。
毛髪表面ではキューティクル・キューティクルCMCが壊されたことでキューティクル同士の接着が弱くなり、毛羽立ってきます。また内部の間充物質が流出することで、内部がすかすかになり、毛髪そのものがいびつな形になってきます。
これがツヤをなくし、ヨレが生じたり、手触りを悪くする原因になります。