髪の傷みを大解剖 :髪の傷みは戻らないの?

聞き手:髪は一度傷んでしまったら戻らないと聞きました。
トリートメントなどで補修しても意味がないのでしょうか?

一度傷んだ髪は、”二度と元の状態に戻ることはありません”。

トリートメントはもともとキューティクルに吸着するものです。
キューティクルが傷んでいる髪につけても、残念ながら効果は発揮しません。つまり、傷む前にトリートメントすれば、キューティクルを保護することができますが、一度傷んだ髪にトリートメントをつけても、それ以上傷むのを防ぐだけで、傷んだ髪が元の状態に戻るわけではないということです。
ただ、トリートメントは毛髪そのものを治すことはできませんが、手触りやツヤなどを一時的に改善することはできます

では一度傷んでしまった髪は諦めて放置するしかないのでしょうか?

傷んだ髪はさらに傷みが広がりやすい状態になっています。放置するとどんどん傷みが進行してしまいます。
傷みを“進行させない”ためのケアは必要です。ただし傷みの度合いによっては切ってしまうことをお勧めしますね。

生えてきたばかりの傷みのない髪のうちから、しっかりケアしていく必要があるんですね。

そうです。トリートメントはけがを直す「薬」ではなく、けがをしないための「予防薬」のようなものです。
生えたばかりのノンダメージ毛に対して正しいケアをしていくことが重要なんです。

髪の傷みを大解剖 :髪が傷んでいる状態とは?(プロ向け)

ご存じのように、髪は大きく分けて、●キューティクル(毛小皮)、●コルテックス(毛皮質)、●メデュラ(毛髄質)に分けられます。これらは、のり巻きのような構造をしていると言えます。
のりがキューティクル、ご飯粒(これは長っ細いタイ米をさらに細長くしたような感じ)がコルテックス、かんぴょうがメデュラです。そして、キューティクル1枚、ご飯粒一粒がひとつの細胞からできているのです。

ご飯粒(コルテックス細胞)の中には、さらに小さな米粒とそれをくっつけている接着剤のようなものがあります。
これをマクロフィブリル、マクロフィブリル間物質と呼びます。そしてマクロフィブリルはさらにミクロフィブリルとそれをくっつけている接着物質であるマトリックスからできています。
すなわち毛髪はマトリョーシカのようになっているのです。
接着剤の役割をもつマクロフィブリル間物質やマトリックスを「間充物質」と呼ぶことがあります。

コルテックス細胞同士は密着しており、あいだを埋める接着物質の代わりに、細胞膜同士が融合した細胞膜複合体(CMC:
Cell Membrane Complex)を形成しています。これはCMCの中でも、コルテックス・コルテックスCMCと呼ばれるものですが、CMCは重なったキューティクルとキューティクルの間にも存在し、キューティクル・キューティクルCMCと呼ばれます。またキューティクルとコルテックスの間にもあって、こちらはキューティクル・コルテックスCMCと呼ばれます。
すなわち、毛髪の中には3種類のCMCがあるわけです。
CMCは脂質とマトリックスに似たタンパク質でできています。とくにキューティクル・キューティクルCMCには18-MEA(18-メチルエイコサン酸)と呼ばれる脂質があり、これが髪の表面のツヤに大きく影響しています。

毛髪に水や薬剤が浸透するとき、このCMCを通ってコルテックス内部に浸透し、ミクロフィブリルやマトリックスに作用するわけです。健康な髪だと、水につけたとき、あっという間に内部に浸透し、水から出すとあっという間に水分を吐き出します。これはCMCの作用で、CMCは髪の中の高速道路と言えます。

よく繊維という言葉が使われますが、毛髪そのものを繊維と呼ぶこともありますが、私たちは、コルテックス、マクロフィブリル、ミクロフィブリルもそう呼び、特にマクロフィブリル、ミクロフィブリルを、毛髪とは分けて繊維と呼ぶことが多いのです。ちなみにフィブリルfibrilとは繊維を表す言葉で、ほとんどfiberと同じです。

まとめると、おおざっぱにいえばコルテックスは、繊維とそれをくっつける間充物質でできていると言ってもよいと思います。
パーマやカラーで髪が傷むとき、まず薬剤の浸透経路であるCMCが影響を受け、薬剤の作用がきつすぎるとCMCが壊され穴が開いたような状態になります。それで薬剤が内部に浸透すると、マトリックスなどの間充物質の結合が切れ、細切れの状態になり、毛髪外部に流出してきます。

毛髪表面ではキューティクル・キューティクルCMCが壊されたことでキューティクル同士の接着が弱くなり、毛羽立ってきます。また内部の間充物質が流出することで、内部がすかすかになり、毛髪そのものがいびつな形になってきます。

これがツヤをなくし、ヨレが生じたり、手触りを悪くする原因になります。

髪の傷みを大解剖 :髪が傷んでいる状態とは?

聞き手:
髪がぱさつく、ツヤがない…などと言いますが
具体的に髪が傷んでいるとは、どのような状態のことなのでしょうか?

★髪の表面

通常、健康なキューティクルは6〜8層をなして髪の内部を守っていますが、紫外線やシャンプーなどの物理的な力やパーマやカラーなどの髪に与えられる刺激によってキューティクルがめくれ上がったり、はがれたりすることで隙間ができてしまいます。
そのことで、触った感じがザラザラゴワゴワになり、小さな凹凸が増えることで、髪の表面で光が乱反射し、見た感じもツヤがなくなります。またキューティクルに隙間が出来てしまうことで、髪の内容物を守る機能が低下します。

ノンダメージの髪の表面

ノンダメージの髪の表面

ハイダメージの髪の表面

ハイダメージの髪の表面

★髪の内部
カラーやパーマなどの刺激によって、髪の中で支えている柱が科学的に切られることにより、髪の構造が弱くなります。1本の柱で支える家と10本の柱で支える家は強度を想像すると、髪の中の柱がしっかりしていることの重要性がイメージできるのではないでしょうか。
柱が切れて髪の構造が弱くなると、髪の内容物(タンパク質・脂質)が外に出やすくなり、髪の中に空洞が増えてしまいます。それにより、脂質がとどまりにくくなり、髪がぱさつきツヤが低下するのはもちろん、大変芯が弱い、へなっとした髪になってしまいます。

 

毛髪科学のプロ Mr.Kからちょっと詳しく◎

髪はのり巻きのような構造をしています。
のりがキューティクル、ご飯粒がコルテックス、かんぴょうがメデュラと呼ばれます。毛髪ではのりに相当するキューティクルが6~8枚重なっており、ご飯粒に相当するコルテックスの中には線維とそれをくっつける間充物質と呼ばれる物質があります。かんぴょうはあったりなかったりします。

ここ十数年の研究で、キューティクル同士やコルテックス同士をくっつけるCMC(細胞膜複合体)が毛髪の健康に重要であることがわかってきました。CMCは水や薬剤が毛髪に浸透するとき、通り道になる部分であるばかりでなく、毛髪表面では毛髪のツヤや手触りに重要な役割を果たしています。
パーマやカラーで毛髪が傷むとき、まずCMCが破壊され、キューティクル同士の接着が弱くなり、毛羽立って、ツヤや感触が悪くなります。さらにCMCが壊されたことで、内部の間充物質が流出し、すかすかの髪になって、適正な水分も保持することができなくなります。

これがヨレやパサつきの原因です。

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