髪の傷みを大解剖 :髪の傷みは戻らないの?

聞き手:髪は一度傷んでしまったら戻らないと聞きました。
トリートメントなどで補修しても意味がないのでしょうか?

一度傷んだ髪は、”二度と元の状態に戻ることはありません”。

トリートメントはもともとキューティクルに吸着するものです。
キューティクルが傷んでいる髪につけても、残念ながら効果は発揮しません。つまり、傷む前にトリートメントすれば、キューティクルを保護することができますが、一度傷んだ髪にトリートメントをつけても、それ以上傷むのを防ぐだけで、傷んだ髪が元の状態に戻るわけではないということです。
ただ、トリートメントは毛髪そのものを治すことはできませんが、手触りやツヤなどを一時的に改善することはできます

では一度傷んでしまった髪は諦めて放置するしかないのでしょうか?

傷んだ髪はさらに傷みが広がりやすい状態になっています。放置するとどんどん傷みが進行してしまいます。
傷みを“進行させない”ためのケアは必要です。ただし傷みの度合いによっては切ってしまうことをお勧めしますね。

生えてきたばかりの傷みのない髪のうちから、しっかりケアしていく必要があるんですね。

そうです。トリートメントはけがを直す「薬」ではなく、けがをしないための「予防薬」のようなものです。
生えたばかりのノンダメージ毛に対して正しいケアをしていくことが重要なんです。

髪の傷みを大解剖 :髪が傷んでいる状態とは?

聞き手:
髪がぱさつく、ツヤがない…などと言いますが
具体的に髪が傷んでいるとは、どのような状態のことなのでしょうか?

★髪の表面

通常、健康なキューティクルは6〜8層をなして髪の内部を守っていますが、紫外線やシャンプーなどの物理的な力やパーマやカラーなどの髪に与えられる刺激によってキューティクルがめくれ上がったり、はがれたりすることで隙間ができてしまいます。
そのことで、触った感じがザラザラゴワゴワになり、小さな凹凸が増えることで、髪の表面で光が乱反射し、見た感じもツヤがなくなります。またキューティクルに隙間が出来てしまうことで、髪の内容物を守る機能が低下します。

ノンダメージの髪の表面

ノンダメージの髪の表面

ハイダメージの髪の表面

ハイダメージの髪の表面

★髪の内部
カラーやパーマなどの刺激によって、髪の中で支えている柱が科学的に切られることにより、髪の構造が弱くなります。1本の柱で支える家と10本の柱で支える家は強度を想像すると、髪の中の柱がしっかりしていることの重要性がイメージできるのではないでしょうか。
柱が切れて髪の構造が弱くなると、髪の内容物(タンパク質・脂質)が外に出やすくなり、髪の中に空洞が増えてしまいます。それにより、脂質がとどまりにくくなり、髪がぱさつきツヤが低下するのはもちろん、大変芯が弱い、へなっとした髪になってしまいます。

 

毛髪科学のプロ Mr.Kからちょっと詳しく◎

髪はのり巻きのような構造をしています。
のりがキューティクル、ご飯粒がコルテックス、かんぴょうがメデュラと呼ばれます。毛髪ではのりに相当するキューティクルが6~8枚重なっており、ご飯粒に相当するコルテックスの中には線維とそれをくっつける間充物質と呼ばれる物質があります。かんぴょうはあったりなかったりします。

ここ十数年の研究で、キューティクル同士やコルテックス同士をくっつけるCMC(細胞膜複合体)が毛髪の健康に重要であることがわかってきました。CMCは水や薬剤が毛髪に浸透するとき、通り道になる部分であるばかりでなく、毛髪表面では毛髪のツヤや手触りに重要な役割を果たしています。
パーマやカラーで毛髪が傷むとき、まずCMCが破壊され、キューティクル同士の接着が弱くなり、毛羽立って、ツヤや感触が悪くなります。さらにCMCが壊されたことで、内部の間充物質が流出し、すかすかの髪になって、適正な水分も保持することができなくなります。

これがヨレやパサつきの原因です。

キレイ髪プロジェクトを立ち上げた経緯

聞き手:キレイ髪プロジェクトの概要を教えてください。

キレイ髪プロジェクトは、クレアトゥール ウチノで研究を続けてきた「キレイ髪」メニューの技術を全国の志を同じくするサロン(現在6サロン)で提供し、確かなヘアケア技術で日本中皆さんの髪を「キレイ」にすることを目指して活動するプロジェクトです。
サロンでのメニュー展開はもちろん、撮影会(講習会)を通して意見交換を行ったり、キレイ髪の体験記をまとめたパンフレットを作成したりする活動も行っています。
より詳しいプロジェクトの様子は公式WEBサイトをご覧下さい→http://www.kireigami.com

 

聞き手:なぜこのようなプロジェクトを立ち上げようと思われたのですか?

1番はとにかくこれ以上サロンで髪を傷めるということをしたくなかったからです。
この技術やメニューをオリジナルとして、自身のサロンだけで行っていくことはもちろん可能でした。

しかし「この技術をニュースタンダードにしたい!」「広げていきたい!」という想いでキレイ髪プロジェクトを立ち上げました。
また、いろいろな方にお話をうかがい、経験や技術に対する勉強をしている美容師さんほど、サロンにキレイになりにきているお客様の髪を結果的に傷めてしまっていることが最大の悩みだということもわかりました。

「パーマやカラーは髪を傷めてしまうものだ…」と諦めてしまうのではなく、「ごまかさず、お客様と真摯に向き合う美容師でいたい!そういうサロンを作りたい!」という願いを一緒に実現できる場所、それがキレイ髪プロジェクトです。
キレイ髪プロジェクトに参加されるサロンを募集しています→http://www.kireigami.com/info/info_01.html

ブログの登場人物

●内野邦彦(株式会社クレアトゥール内野 代表取締役)
「キレイな髪があってこそカットもスタイリングも決まる」1970年代にサスーンアカデミーにてヴィダルサスーン氏から聞いた言葉をコンセプトに、サスーンカット技術の研鑽を積み、加えてキレイな髪を作る探求を深める。
日本で初めてヘアエステを美容室のメニューとして導入。美容のヘアクリニックの分野に精通し草分け的な地位を獲得。その技術と知識は数多くのCM撮影などに生かされている。
経営者としての顔を持つ一方で、今なおトップレベルの美容師としてサロンワーク、講習活動やCM出演、技術協力など多方面で活躍。「キレイ髪プロジェクト」を立ち上げ、北海道、福井、千葉、大阪、福岡と提携先を拡大中。
ロンドンサスーンアカデミーと日本のサロンとの連携を深めることにも奮闘している。

<経歴>
東京マックス美容専門学校卒
ヴィダルサッスーンアカデミー・ロスアンジェルス校、ロンドン校にてサッスーンカットを修得
1987年 「株式会社クレアトゥール内野」設立
1990年 表参道に「クレアトゥール ウチノ」1号店(表参道)をオープン
1993年 ヴィダルサスーンロンドンにて、インストラクター登用試験に合格後、サスーンインストラクターに就任
1998年まで全国でのサスーンカット講師及び、サスーン関連コレクションに参加
2000年 「クレアトゥール ウチノ」2号店(原宿店)をオープン
2002年 ルイヴィトンビルB1階に「クレアトゥール ウチノ」表参道店改装オープン
2006年 大手化粧品メーカーCMに出演
2007年 11月1日に表参道ジャイル3Fに表参道店を移転新規オープン、原宿店リニューアルオープン
2009年 「キレイ髪プロジェクト」 スタート

●Mr.K(毛髪科学のプロ)
埼玉大学工学部応用化学科卒業後、日本の毛髪科学の泰斗大門一夫に師事。
二人で毛髪化粧品の処方開発および毛髪の物性研究を行う。
以後400を越える化粧品・医薬部外品の処方開発を行ってきた。
2000年化粧品の開発と毛髪研究を主たる業務とする会社を起こし、現在に至る。

私はこんな理由でブログをはじめました。

聞き手「まずはこのブログの開設にもつながるサロンのコンセプトをお聞かせください。」

私は1年=365日「キレイな髪で過ごしていただきたい」という思いで、サロンをスタートさせました。
ご自宅での日々のヘアケアを成功させるためには、まずはサロンでカラーをしたり、パーマ、ストレートをするときにできる限り髪にダメージを与えないことが大切だという強い想いから、サロンで、ダメージの少ないメニューの開発、技術向上に取り組んでいます。
サロンに来たその日だけでなく「いつもキレイ」を目標に、お客様に対して真摯に向き合っています。

聞き手「日本ではじめてヘアエステをメニューに取り入れたということですが、その経緯は?」

1970年代にカットの神様ヴィダルサスーン氏から「髪がキレイでなければ、いくら良いカットをしても、カットが活かされない」とお話を伺い、とても感銘をうけ、カットの勉強と平行して、ヘアケアの勉強に取り組み始めました。
 そして、街で見かける女性の多くがサロンでカットやカラーをしているはずなのに、どうして「キレイ」な髪の女性が少ないのだろう?という素朴な疑問から、髪を内部から修復させる技術=ヘアエステの開発に取り組みました。
また、髪を外側からケアする「トリートメント」と分けて考えてもらえるように、日本で初めて「ヘアエステ」という言葉を作りメニューに載せました。

聞き手「薬液やヘアケアはほとんどオリジナルのプロデュースによるものだということですが、オリジナルにこだわる理由はなんですか?」

若い時は疑うことなく、既成の薬液を使っていましたが、思った結果に至らず「どうしてだろう?」と感じる場面が多々ありました。疑問を解明していく中で、どうしても自分が必要であると感じたものを作ってもらわなければ「納得」のいく仕上がりを実現出来なかったので、納得いくものを追求した結果オリジナルのプロデュースによるものになったということです。
現場で様々なお客様の髪を施術する中で、既成の薬液にあてはまらない方が非常に多い事にきづいた事も、オリジナルのプロデュースによる薬液を作ってもらおうと考えた理由の一つでした。

聞き手「このブログはどんな想いでたちあげられたのですか?」

サロンでは「自分の髪質が悪いから今まで思ったようにならなかった」…というお客様のお声を多数お聞きします。
サロンのメニューや技術は進歩しているにも関わらず、カラー=傷む、パーマ=すぐとれる/思ったカールやウエーブにならない/傷む、ストレート=ツンツン極端にまっすぐになる、傷む…と 未だ多くのお客様がこのような不安や固定観念を持っていらっしゃると感じます。その結果、サロンは仕方なく行くところ…満足するのは無理…と思われている事がとても残念です。
サロンに行っても希望通りにならないし…とあきらめている方に、素朴な疑問から毛髪科学のことまでわかりやすく解説し、もっと美容室に行く事が楽しくなることを願って、このブログを始めようと思いました。

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クレアトゥールウチノは再びキレイな髪に生まれ変わる「再生」と「発見」ができる空間を目指しています。

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